医師や心理士にマインドフルネスが必要な理由①

医師や心理士(カウンセラー)、看護師や教師といった対人援助職の方々に求められる能力はなんでしょうか?

 

専門知識?適切な機関での訓練?臨床経験?優しさ?話しを聴く力?もちろんこれらの能力は当たり前に必要です。しかしそれと同じくらい大事な能力があります。

 

それは、常に自分自身を客観的(俯瞰して)に観ることが出来る能力です。メタ認知とも言います。自分が今どのような状態か?心の中には何が生じているのか?身体にはどのような反応が起きているのか?今この場ではどんな事象が起きているのか?に気づく能力です。また気づくだけではなく、気づいたことに「囚われない」という能力(マインドフル)もさらに重要となります。

 

つまり治療中やセッション中でも「マインドフル」な状態でいることが、対人援助職の方々にはとても大事な事なのです。なぜマインドフルでいることが求められるのでしょうか?

 

それは何かに囚われることで、目の前で起きている事象をきちんと把握することが出来なくなるからです。治療の現場で何かに囚われる医師は、患者をきちんと診ることは出来ません。囚われたものを通して患者と接するため、バイアスや思い込みに基づいた診断や治療を無意識に行ってしまうのです。そして残念ながら多くの医師は何かに囚われた状態で診察を行っています。

 

何かに囚われた医師は、患者をあらかじめ持っている知識や理論に当てはめます。その結果、患者をありのままに観て症状や真の原因を探ることが出来なくなるのです。これは医師だけでなく、心理士やカウンセラーにも頻繁に起こります。もちろん介護士や保育士、教師や看護師といったその他の対人援助職の方にも起きている現象(全ての人類に起こること)です。

 

勉強が好きな(得意)対人援助職の方ほど、知識や理論に囚われた状態に陥りやすい傾向にあります。知識が増えるほどその重要性が増し、いつのまにか知識を通してしか目の前のことを解釈することが出来なくなる傾向が人間にはあります。知識や理論も大切ですが、そこに囚われてしまうと肝心の目の前に居る人と向き合うことが出来なくなります。

 

相手と向き合うことは、治療や援助の場でとても重要なことです。ここを理解していない(もしくは囚われて忘れている)援助職の方が多すぎます。

 

患者と向き合える医師と向き合えない医師では、前者の方が圧倒的に治療成績が高いはずです。なぜなら患者は医師がきちんと向き合ってくれるだけで、心から安心します。安心すると無駄な緊張が緩み、病気の状態から健康な状態に戻るよう身体が自ら調節してくれるからです。

 

身体はストレス度やメンタルの状態、物事の捉え方や他者との関わりなどで状態が大きく変わります。その状態によって抱えている病気の症状の有無が違ってきます。場合によっては突然治ったり、悪化したりすることもあります。臨床の現場で日々奮闘している方であれば、このことが痛いほどわかるでしょう。

 

大事なのは表面的な優しさや言葉ではなく、真正面から患者と向き合うことです。それだけで(非常に難しいのですが)患者の状態は治癒に向かいます。知識やエビデンスを重視し過ぎて、人間と向き合うという当たり前のことが失われているのが現代です。科学がかなり発展してきているとは言え、理論や理屈だけで病気や症状を改善出来るという考えは傲慢で甘すぎます。(傲慢な医師ほど薬やワクチン、手術などを絶対視する)

 

とは言え、目の前の人(患者やクライアント)と向き合うのは現代人にとっては非常に困難だと思います。なぜなら私たちの大多数は、目の前の人と真正面から向き合うという行為を子供の頃からほとんど行わずに大人になってしまったからです。

 

他人と向き合うことを訓練されていない、正確に言えば子供の頃に向き合ってくれる大人(親や先生など)が居なかったのです。他人と向き合う(向き合ってくれる)という経験が出来なかった(あっても少ない)人は他人と向き合うことが出来ません。(経験していないから出来ないし、そういうことすら考えない)

 

大人が向き合ってくれないのは、子供のことを愛していないからではありません。大人自体が何かに囚われていたため、心に余裕がなく子供(他人)と向き合うことが出来ないのです。

 

生活に追われていたり、何か問題を抱えていたり、慢性的な精神的ストレスに襲われていたり、偏った思考や物の見方が強かったりすれば頭の中はそれでいっぱいになりスペースがなくなります。スペースとは心の余裕のこと。心に余裕がなければ他人と向き合うどころか、自分と向き合うことも出来ません。

 

どんな仕事でも非常に忙しい時はそれをこなすので精一杯で、他の人間に意識を向ける余裕がないでしょう?心に余裕がない人は、本人にその自覚がないだけで常にその状態なのです。これが囚われた状態(マインドレス)です。

 

目の前の人に向き合うためには囚われを手放すことです。手放すためには何に囚われているのか?に気づくこと。気づくためには自分自身を客観的に観る(自分自身と向き合う)ことが必要です。まずは自分自身と向き合う(マインドフルネスの実践や瞑想)ということに取り組まなければいけません。

患者に違和感を与える医師

目の前に居る患者やクライアントに向き合えない医師や心理士(カウンセラー)はどれだけ知識を持っていても、エビデンスを読み込み立派な肩書や資格を持っていてもダメです。頭でっかちなだけで患者の役には立ちません。

 

なぜなら目の前の患者やクライアントに向き合うことが出来ない医師や心理士(カウンセラー)は、患者やクライアントに違和感を与えるからです。相手が気づいているか、気づいていないかは関係なく違和感は精神にも肉体にも伝わります。違和感の強さによっては心と身体に悪影響を確実に与えます。

 

もう少し具体的に言えば、違和感は心理的、肉体的に無駄な緊張(病気の原因)を生じさせるということです。ただでさえ病気や何かの症状を抱えている人は、必要以上に心理的にも肉体的にも緊張しています。その状態の患者やクライアントに治療者がさらに緊張を与えるとはどういことでしょうか?

 

つまり違和感を与える医師や心理士(カウンセラー)は患者やクライアントの病気を治療するどころか、病気の状態を引き延ばしている(悪化させる)可能性があるのです。どんな治療を行っても治らない病気は、治療方法に問題があるのではなく、治療者(周囲の人間)が出す違和感が原因かもしれません。

 

他人に違和感を与える人は、何かに囚われています。囚われの強さに比例して違和感の強さも大きくなります。わかりやすいのが男性が女性に与える印象です。男性が「どうにかこの人を口説き落そう」と強く思ったり(無意識でも)考えると、それは「下心」として確実に女性に伝わります。(もちろん逆のパターンもある)

 

それをキャッチした女性は男性に違和感を覚えます。そして違和感が嫌悪感に変わりこの男性を敬遠するのです。言葉ではなく発する雰囲気や空気で伝わります。

 

客をお金としか見ていない営業マンやお店のスタッフに嫌な感覚を覚えた人も少なくないでしょう。この場合は「売りたい」「儲けたい」という「下心」が客に違和感として伝わったからです。

 

なぜ「下心」が違和感になるかと言うと、「下心」がある状態は囚われた状態だからです。囚われた状態(下心じゃなくても)は相手(周囲)に違和感を与えます。「下心」が強ければ強いほど、違和感も強くなります。

 

言葉や表面上の見た目(装飾)はいくらでも誤魔化すことが出来ますが、発する雰囲気や空気を誤魔化すことは不可能です。口ではいくら良いことを言っても「下心」があれば、違和感は確実に相手に伝わります。言葉や見た目を繕うほど内面とのギャップで違和感はさらに強くなるでしょう。

 

違和感は目の前の人に遺伝子レベルで悪影響を与えます。医師や心理士などに必要なのは、患者に違和感を与えないことです。これは絶対条件です。患者に違和感を与え続ければどんな治療を施しても、病気は治りません。ここに気づいていない人が多すぎるように感じます。

 

私自身もたくさんの医師や心理士やカウンセラーと接してきましたが、残念ながら大半が違和感を与えまくる人達でした。頭は良いのかもしれませんが、自分や家族が病気になったときに信頼して身を任せることが出来ないと思いました。 

囚われを手放すこと

何かに囚われた治療者は患者に違和感を与え、患者の治る力を弱め治癒の妨げをします。なので治療の現場で囚われない状態(マインドフル)をいかに作ることが出来るか?がとても重要になってくるでしょう。

 

囚われないため(囚われても)には自分を客観的に観ること。これは知識として知ってるだけでなく身体に身に着いていなければ机上の空論となります。囚われないを身に付けるためには、マインドフルネスの実践や瞑想の訓練が必要です。

 

ここで簡単にマインドフルネスの実践法を紹介します。まず何か意識(注意)を向ける対象を見つけてください。自分の呼吸や身体の感覚(足の裏など触れている部位)、音や目の前の景色など何でもかまいません。その対象に3分間で良いので意識を向け続けて(集中)ください。

 

しかしわずか3分でも意識を対象だけに向け続けるのは不可能です。すぐに他の所に意識が向いたり、頭の中に思考や言葉、イメージが浮かんだりします。

 

それは別にかまいません。意識が対象から外れたらすぐに対象に意識を戻してください。対象にすぐに意識を戻すためには、自分の意識がどこにあるのか?を常に把握しておかなければいけません。つまり自分自身を客観的に観続けるということです。これを毎日繰り返し行っていると、意識が対象から外れてもすぐに戻せるようになります。

 

それを臨床の現場に応用すれば、患者やクライアントの前でも囚われを手放すことが出来るようになります。それは患者やクライアントと向き合うことにつながり、治療の効果は格段にアップするはずです。

 

フランス発祥の認知症ケアである「ユマニチュード」をご存じですか?ユマニチュードは「人間らしさを取り戻す」という意味だそうで、日本でも非常に注目されているケアです。

 

ユマニチュードには「見る」「話す」「触れる」という柱がありますが、あれこそがまさしく目の前の人と向き合う実践です。ユマニチュードの実践をテレビで見たことがある人もいるかもしれませんが通常のケアと違ってより人間らしく、患者を扱っています。

 

効果も通常のケアよりもユマニチュードを行った方が、患者の状態が見た目にも明らかに良くなります。ユマニチュードの実践を見る度に、目の前の人ときちんと向き合うことがどれだけ大事なのかと改めて感じます。もちろん表面上だけ(テクニックとして)のユマニチュードではダメです。

 

ユマニチュードの訓練はまだまだ一般的ではないそうですが、患者やクライアントときちんと向き合うためにも非常に良い方法ではないでしょうか?

 

医師や心理士にマインドフルネスが必要な理由②