炭水化物は太りません。もちろん過剰に摂取すれば太りますが、それはタンパク質でも脂質でも同じことです。炭水化物は脂質に比べて太りにくい栄養素です。
にも拘わらずなぜか炭水化物(糖)ばかりが太るとクローズアップされ悪者にされています。
糖質制限ダイエットに取り組む人達はお米や果物は太ると信じ、脂質やタンパク質を大量に摂取します。
その結果、糖質制限ダイエット(炭水化物抜きダイエット)に取り組んだ人達はダイエットに成功したのでしょうか?
答えはノーです。糖質制限ダイエットを実施するとたしかに短期間で体重は落ちます。
しかしこの落ちた体重は体脂肪ではなく水分です。
私たちの体内で糖1gに対して3gの水分と結びついています。糖の摂取を減らせば、単純計算で糖の3倍の水分が抜けることになるのです。
身体の8割は水分と言われていますから、水分が抜ければ体脂肪の増減に関係なく体重が減るのは至極当然です。
糖質制限ダイエットが人気の理由は短期間で体重が落ちるからです。
糖質制限ダイエットでは1週間で体重が3キロくらい簡単に落ちます。
しかし落ちた体重のほとんどが水分ですからあまり意味はありません。それどころか健康にマイナスです。
しかも糖質制限ダイエットは筋肉量を減らし、糖代謝機能を低下させて糖尿病などあらゆる病気のリスクを増大させます。
太りやすく痩せにくい身体にもなるでしょう。
まず炭水化物とは何でしょうか?
ここからは炭水化物についての基本的な知識を簡単にお伝えしていきます。興味のない方や知ってる方は飛ばしてもらって大丈夫です。
炭水化物はタンパク質、脂質と並ぶ3大栄養素とされています。
炭水化物は私たちの身体を動かし機能させるための主なエネルギー源です。
タンパク質と脂質は、エネルギー源というよりは身体を構成するための栄養素です。(緊急時やストレス下ではこれらもエネルギー源になる)
炭水化物が含まれる代表的な食品は、皆さんよくご存じのお米やパン、うどんやパスタなどです。イモ類などの穀物もそこに含まれます。
炭水化物は「糖」と「食物繊維」に分かれます。エネルギー源として利用されるのは「糖」です。
「食物繊維」は消化、吸収されませんがお腹の調子を整えたり、腸内細菌を増やしたりと有益な働きをしてくれる栄養素です。
「糖」にはいろいろな種類があります。「糖」の種類によって体内のエネルギー効率が変わります。
また同じ炭水化物がメインの食品でも含まれる「糖」の種類は違います。
炭水化物は構成している単糖の数が1個のものを「単糖類」2個のものを「二糖類」、2~10個のものを「少糖類」それ以上のものを「多糖類」と呼びます。
「単糖類」には「ブドウ糖」「果糖」などがあり「二糖類」には「ショ糖」「乳糖」「麦芽糖」などがあります。
「ショ糖」とは「ブドウ糖」と「果糖」が結びついた砂糖のことです。
「少糖類」は「オリゴ糖」とも呼び、腸内の善玉菌を増やす効果があると言われています。
「多糖類」には「でんぷん」や「グリコーゲン」があります。どちらも「ブドウ糖」が多数結合したものです。
また「果糖」に多く含まれる「ペクチン」やこんにゃくに含まれる「グルコマンナン」などの食物繊維も「多糖類」に分類されます。
炭水化物が太らない(太りにくい)理由は、炭水化物(糖)を体脂肪に変換するのは、非常に効率が悪いからです。
効率が悪いというのはエネルギーのロスが生じるということです。私たちの身体は可能な限りエネルギーのロスを防ぐように機能します。なぜならエネルギーのロスは餓死につながるからです。
私たちの身体は望む、望まないに関係なく生存を最優先にします。その機能の一つがエネルギーのロスを防ぐことです。
糖は糖のまま、脂質は脂質のままに使用した方が効率が良いのです。糖が優先的にエネルギー源として使用されるのはロスがないからです。
摂取した炭水化物(糖)を体脂肪に変換することが、いかに効率が悪いのかを具体的にみていきましょう。
糖質1gから作られる脂質は0,28gです。100gの糖質を摂取しても28gしか脂質は作られません。カロリーベースでみても約37%のロスです。
しかもこれは摂取カロリーが消費カロリーを大幅に超えた場合の変換率です。
炭水化物(糖)を摂取するとまず身体は、糖をグリコーゲンに変えて貯蔵しようとします。貯蔵される場所は主に肝臓や筋肉です。
その量は体重1kgあたり最大で15gまで貯蔵可能と言われています。貯蔵量には筋肉の量が大きく関係しています。
単純に計算すれば体重が60kgの人であれば約900g(お米1合で約116gの糖質)まで貯蔵できるというわけです。
つまりグリコーゲンの貯蔵量が満タンの状態で、なおかつ炭水化物(糖)を多く摂取して初めて脂肪に変換されるということです。これはなかなかハードルが高い作業です。
摂取した炭水化物(糖)は貯蔵すると同時に、エネルギーとしても常に消費されています。平均的な食事量や活動量の人が少々、お米を食べ過ぎたところで太るリスクは相当低いのです。
果物や砂糖に含まれる果糖は、エネルギーとして使われる前に肝臓で脂肪に変わるという話しも広がっていますがそれも嘘です。
果糖はまず小腸でブドウ糖に変換され、エネルギー源や貯蔵に回ります。
そこでの代謝を超えた分が肝臓で脂肪に変換されるのです。脂肪に変換されるためにはかなりの量の摂取が必要になります。
動物実験で果糖が太るというデータがいくつかありますが、その研究では通常ではありえない量の果糖を摂取させています。
私たちがフルーツや砂糖を少々摂取したところで太ることはありえないのです。
むしろフルーツや砂糖は積極的に摂取した方が良いでしょう。
ここで一度に500gの炭水化物を摂取した後に脂質とグリコーゲンの合成を調べた研究を紹介します。(Metabolismより)
研究の内容をざっと解説すると10人の健康な男性被験者にパン、ジャム、フルーツジュースなど479gの炭水化物を摂取してもらった後の身体の変化を調べたものです。
食後10時間の間に133gの炭水化物、17gの脂肪、29gのタンパク質がエネルギーとして使われ、346gの炭水化物がグリコーゲン貯蔵量に使われました。
論文の結論は、ヒトにおけるグリコーゲン貯蔵量は一般に信じられているものよりも大きいとのこと。
ここまで読まれてきて、炭水化物が太るという洗脳は解けたでしょうか?
炭水化物は太りません。それに比べて摂取した脂質は24時間以内にほぼ全て脂肪に変換されます。
脂肪はどれだけ取っても太らないと主張する人や書籍がありますが嘘です。
中には遺伝的に脂質を摂取しても体脂肪に変換されにくい人もいますが、日本人では稀です。
試しに3日間、脂質の摂取を0に近いくらい減らして、その変わりに炭水化物の摂取を増やしてみてください。お腹周りの脂肪が明らかに減ることが実感できるはずです。
太っている人、痩せない人の食生活をよく見ると、炭水化物だけでなく脂質の摂取量も非常に多いのです。
ファーストフードの栄養成分をみてください。糖質と脂質の塊です。
また太っている人は運動不足の場合が多く、消費するエネルギーより摂取するエネルギーの方が多いので太るに決まっているでしょう。
先ほどお伝えしたように炭水化物も貯蔵量を超えて食べまくれば太ります。
炭水化物でもタンパク質でも何でも、度を越えて摂取すれば太るのです。
定期的に運動を行い、常識的な食事量であればまず太ることはありません。
ダイエットを成功させたいのであれば炭水化物の摂取量ではなく、食事全体と運動習慣を見直した方が良いでしょう。
最後になりますが、勘違いして欲しくないことが一つあります。炭水化物は太らないと言っても、炭水化物を摂取すると体重は増えるということです。
グリコーゲンの貯蔵量が増えれば同時に水分量も増えるので体重は増えます。しかしそれは体脂肪の量とは関係ありません。
ダイエットと体重は関係ありません。体重は一つの目安になりますが、それよりも重要なのは体脂肪が減っているか?です。
体重に拘ると水分や筋肉量を犠牲にしてまで痩せようという思考回路に陥ります。体重と体脂肪は違うということをしっかりと理解してください。
ダイエットとは痩せることではなく、心身の健康の維持・増進です。無駄な体脂肪を落とすのはプロセスであり目的ではありません。