糖代謝機能とは聞きなれない言葉かもしれませんが、私たちの心身の健康を保つ上で非常に重要な機能です。
糖代謝機能を簡単に説明しますと、食事から摂取した糖を細胞に取り込み貯蔵して、必要な時に必要な場所でエネルギーとして利用するシステムのことです。
糖代謝機能は糖尿病の発症にも大きく関係しています。
糖代謝機能が低下すると、細胞が糖を取り込めなくなります。細胞が糖を取り込めなくなると、糖が血液中に溢れます。これが血糖値が高い状態です。
糖代謝機能が正常の人であれば、糖を摂取しても細胞(特に筋肉)が糖を取り込み消費してくれるので、血糖値はそれほど上昇しません。
しかし糖代謝機能が低下、またはストップしている人が糖を摂取すると、細胞が糖を十分に取り込むことが出来ないため、血糖値が上昇するのです。
しかも糖代謝機能が低下している人の血糖値はなかなか下がりません。
糖が血液に溢れた状態は危険です。身体は身を守るために糖を無理やり細胞に吸収させようと、インスリンの分泌量を増やします。
糖を摂取する度にこれが何度も繰り返されると、膵臓は疲弊しインスリンの分泌量が低下し、糖がより血液中に溢れることになります。
いつまでも血糖値が下がらず、この状態で病院に行くと糖尿病と診断されるのです。糖代謝機能の低下は糖尿病を発症するだけではありません。
糖代謝機能が低下するとそれに比例して、免疫システムの働きが弱くなります。つまり糖代謝機能の低下はあらゆる病気やアレルギーの発症リスクを上昇させることを意味するのです。
ここからは免疫システムの基本的な話しとなります。免疫に詳しい方や免疫に興味のない方は飛ばしてもらって大丈夫です。
免疫システムには「自然免疫」と「獲得免疫」があります。
「自然免疫」は侵入してきた病原体(細菌やウイルス、バクテリアなど)や異常になった自己の細胞(劣化したタンパク質など)を非特異的(免疫記憶なしに)に感知し直接排除します。
この時の主役は「マクロファージ」や「好中球」などの白血球です。(近年、自然免疫にも記憶をもって病原体を攻撃することがわかっている)
「獲得免疫」は感染した病原体を特異的に見わけ、それを記憶します。
記憶することで次に同じ病原体に出会ったとき、非常に効果的に排除するのです。
記憶に従って病原体を攻撃するのは「Tリンパ球」と「Bリンパ球」です。「Tリンパ球」は病原体をダイレクトに攻撃し、「Bリンパ球」は抗体を速やかに作って病原体を排除します。
身体に備わったこのような機能が正常に働くことで、病原体から私たちを守るというわけです。
免疫システムの働きは、体外から入ってきた病原体や異物を排除するだけではありません。体内で生まれたゴミ(劣化した細胞など)を排除する働きもあります。
代表的なものがマクロファージや好中球による食作用です。これらの白血球細胞は、細胞内のゴミをバクバク食べて消化し無害化します。
体内で生まれたゴミを放置すると、そのゴミから毒物が生じ細胞にダメージ(炎症)を与えます。
そのメカニズムを赤血球で説明します。赤血球は寿命が120日と言われています。120日立つと赤血球は機能を低下し働きを止めます。
働きを止めた赤血球がそのまま放置されると、劣化した鉄(毒性を持っている)が血液中に放出されます。
それが血流に乗って全身を循環し臓器を始め、各細胞に炎症を引き起こし様々な病気の発症リスクを上昇させるのです。
免疫システムが正常に働いていると、マクロファージや好中球が役目を終えた赤血球を速やかに食べてくれるため、炎症は起こりません。
私たちの体内では日々、このような食作用というゴミ掃除が行われているので健康を保つことが出来ているのです。
近年、話題になったオートファジー(自食作用)もゴミ掃除に大きな貢献をしてくれています。
オートファジーは主にダメージを受けたタンパク質やミトコンドリア、異常タンパク質といったゴミを食べて分解し、再利用してくれます。
オートファジーは飢餓などのストレス下で活性化すると言われています。
飢餓で食べ物が入ってこない時でも劣化したタンパク質や細胞を食べてリサイクルすることで、エネルギーを確保するありがたい機能なのです。
逆に言えばオートファジーが働かないと、劣化したタンパク質などのゴミがどんどん蓄積されることになります。
アルツハイマー型の認知症もゴミが原因です。
オートファジーが働かないとアミロイドβという異常タンパクが神経内に蓄積されます。その結果アルツハイマー病が発症するのです。
老化も劣化したタンパク質や異常タンパク質が原因です。オートファジーを活性化することで老化のスピードを遅らせることが出来ると言われています。
オートファジーは16時間以上(4時間で)の断食で活性化することがわかっています。
断食は健康に良いということで何千年も前から行われてきましたが、それが科学的に証明されたわけです。定期的な運動でもオートファジーは活性化すると言われています。
逆にオートファジーの働きを低下させる行為もあります。それは過食です。特に高タンパク、高脂質の食事はオートファジーをストップさせます。
昔から言われてきた、腹八分の食事、運動が健康に良いという話しは正しかったのです。
断食は糖代謝機能を低下させる場合もあります。詳しくは⇒断食について
体内で生じたゴミは細菌やウイルス、バクテリアのエサになります。体内にゴミが多いほど、細菌やウイルスが増殖しやすいということです。
増殖した細菌やウイルスはエサをさらに増やそうと炎症を引き起こします。炎症で生じたゴミをエサにウイルスや細菌がさらに増殖するという悪循環が生まれます。
炎症で生じたゴミは「アレルギー疾患」「自己免疫疾患」「ガン」を発症させることがわかっています。
ガンの発症は免疫が関係しているという話しを聞いたことはありませんか?
単純化して説明すると、免疫システムの働きが低下→ゴミが増える→ゴミをエサに細菌やウイルスが増殖→炎症の拡大→がん細胞が増えるという仕組みです。
免疫システムは外から侵入した病原体の排除と体内で生じたゴミ掃除を日々行ってくれています。免疫システムの働きがどれだけ大事なのか?わかって頂けたのではないでしょうか。
免疫システムが正常に働いていれば、病原体の排除と体内のゴミ掃除が常に行われるので病気になることはありません。
しかし何らかの理由で免疫システムの働きが低下することがあります。最大の理由は、糖代謝機能の低下です。
糖代謝機能が低下すると免疫システムの働きも低下します。なぜなら免疫システムのエネルギー源は糖に依存しているからです。
糖を上手く代謝出来なくなると、免疫システムはエネルギー不足に陥り働きがどんどん弱くなります。
免疫システムを最大限働かせたいのであれば、糖代謝機能を高めるしかありません。
糖代謝機能を高める方法は次の3つです。
これらを日々行うことで、糖代謝機能は維持され免疫システムもきちんと働いてくれます。
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