断食は何千年も前から行われてきた健康法の一つです。
定期的に断食をすることで病気が治ったり、老化の速度が遅くなったりという報告があります。実際に断食をすることでガンやアレルギーが治ったという人を何人か知っています。
断食をしたからガンやアレルギーが治ったのか?たまたま治る時期に断食を行っただけなのか?はわかりません。
人間の身体はまだまだわからないことの方が多く、断食に病気を治す効果があるのか?ないのか?については確実な証拠は現段階ではありません。
また断食はただの健康法に留まらず、「神に近づく」といった宗教的側面もあるようです。(あらゆる宗教やヨガの教えの中に断食が様々な方法で実践されている)
近年では、断食は主に健康を維持する目的だけではなく、スポーツやビジネスでのパフォーマンスを向上させるために実践する人も増えています。
一昔前は「食べないと身体に悪い」という認識が一般的でしたが、近ごろは「食べない方が身体に良い」という認識も広がっているそうです。
ここからは断食のメリットとデメリットについてお伝えしていこうと思います。断食に興味がある人、これから断食を始めようと考えている人は、一つの参考にしてください。
断食には様々なやり方があります。
プチ断食と呼ばれる半日断食、一週間は水分以外摂取しない断食、野菜ジュースやフルーツジュースだけを摂取する断食、専門家による指導の元での1か月断食合宿などもあります。
最近、多くの人が取り組んでいるのが12時間~16時間は何も食べない半日断食です。2016年に大隅教授がオートファジーの仕組みを解明しノーベル賞を取ったことがきっかけで広がった断食法です。
オートファジーとは古くなった細胞を食べてリサイクルしてくれる働きのことです。病気や老化は古くなった細胞が蓄積されることによって起こります。
オートファジーは12時間以上、何も食べないことで機能することがわかっています。(実際は4時間くらいでもオートファジーは働く)
オートファジーをしっかり働かせて古くなった細胞をデトックスしていけば、病気になりにくく、アンチエイジングにも有効ということで多くの人が半日断食を実践し始めたのです。
半日断食は取り組みやすく、食べ過ぎの現代人にとっては効果も出やすいので健康を維持するためにとても良い方法ではないでしょうか?
現代人は食べ過ぎです。身体が求める以上に食べています。
いつでも好きな物を食べることが出来る環境が整っていること、身体の感覚が鈍感になっていること、持続する精神的ストレスが必要以上に食べ過ぎてしまう原因です。
身体が求める以上に食べる状態が続くと、食べたものは蓄積されていきます。それが肥満です。肥満は細胞の炎症を引き起こします。この炎症が病気を発症させたり、老化を促進するのです。
また食べるということは、何らかの毒を摂取することでもあります。自然に取れる野菜や果物にも毒は含まれています。
食べる量が多くなるほど、体内に取り入れる毒も増えます。特に現代食には自然に取れる食べ物をはるかに超えた毒(農薬や薬など)が含まれています。
毒は炎症を生じさせ、炎症を拡大させる原因の一つです。
食べ過ぎる状態が続けばそれに比例して毒の摂取も多くなります。このような理由から健康を維持するために、定期的な断食は非常に有効です。
ここまで読んできて断食に興味が出てきた人もいるかもしれません。そんな人にはまず半日断食をおススメします。
数日以上、何も食べない本気の断食は断食未経験の人にとってはハードルが高すぎます。無理に行うと身体に何らかの悪影響が出ることもあります。
それに比べてオートファジーを働かせる半日断食(12時間以上)はそれほど難しくありません。誰でもすぐに実践することが可能です。
12時間の断食には寝る時間も含まれるので、夜の7時にご飯を食べたとしたら次の日の朝7時にはご飯を食べても良いわけです。
16時間の断食をするとしても朝ご飯を抜けばいいだけなので、この程度なら朝の空腹を少し我慢すれば大丈夫です。すぐに実践できると思います。
半日断食でも毎日3食をしっかりと食べていた人には、最初の数日間は空腹感がきついと感じるかもしれません。頭もぼ~っとしエネルギーレベルの低下を感じる場合もあります。
しかしそれは身体の慣れの問題で3日~1週間も行うと逆に楽になります。
食べたいという欲求も減少し、余計な体重も減少します。食べない方が仕事でも勉強でもパフォーマンスの向上を実感できるはずです。
慣れないうちは週末など週に2日くらい行い、慣れてきたら毎日行うと良いでしょう。そこから徐々に食べない時間を長くして数日の断食にチャレンジすることも可能です。
もちろん無理は禁物です。無理に行って身体を悪したり、日常生活に支障が出るのであれば何のために行っているのかわかりません。
初めて数日以上の断食にチャレンジする場合は、経験豊富な断食専門家の指導を受けることをおススメします。(慢性疾患などを抱えている方は必ず主治医と相談してから実践すること)
ここまで読んできて、断食を実践してみようと思った人の気持ちに水を差すかもしれませんが、断食のデメリットや身体への悪影響も紹介しようと思います。
何事もメリットだけでなく、デメリットも理解して実践しなければいけません。
断食の代表的なデメリットは「リバウンド」です。
食欲というのは全ての生き物に備わっている本能です。生物は食べないと生命を維持することが出来ません。(不食の人もいますがそれは例外として)
断食はその本能を意図的に絶つ行為です。食事を絶つ行為は意思の強さと我慢が求められますが多くの場合、我慢は長く続きません。
我慢の反動は、過食を引き起こします。その結果、断食をする前より体重が増えたり、過食が原因による体調の悪化が生じることが起きるのです。
断食をするのであれば、断食を終えた後のことも考えてプログラムを立てなければいけません。
先ほどおススメした朝ご飯を食べない半日断食も、昼と夜に食べ過ぎてしまえば何の意味もないわけです。
断食を実践するのであれば、明確な目的(長期的な)とある程度の強い意思が必要です。
断食のデメリットはもう一つあります。それは断食をすることで逆に病気になりやすい身体を作る可能性があることです。
半日断食(12時間~16時間)くらいであればそれほど悪影響はありませんが、1日以上の断食を実践するとストレスホルモンの分泌が有意に増えることがわかっています。
何も食べない時間が60時間を超えると分泌されるストレスホルモンはかなりの量になり、体内の炎症を加速させ病気のリスクを上昇させると言われています。
私たちの身体は食べない時間が長くなると、蓄積している体脂肪をメインのエネルギー源にします。
糖ではなく脂肪がメインのエネルギー源になると、体内の炎症レベルは上昇します。炎症レベルが上昇すると病気を引き起こすリスクが上昇するのです。
断食を行うと2日目くらいで肌荒れが酷くなったり、体臭がきつくなったり、体調が悪くなることがあります。その原因は炎症レベルが上昇したことで起きた症状です。
これを好転反応としてポジティブに捉える人もいますが、実は身体にとっては危険な状態です。
長期間、身体に食べ物が入ってこない状態は生存本能からすれば危機的状況であり、ストレスでしかありません。
このような理由から、当研究所ではクライアントや講座の受講生に1日以上の断食をおススメしていません。
もちろん断食の影響は個人差があります。数週間の断食の結果、病気が治り体調が良くなった人は実際に存在します。
反対に病気が悪化したり体調が悪くなった人もいるのです。
断食のメリット、デメリットについてはここで紹介したものも含めてたくさんの理論やエビデンスがあります。
それらを参考にして、断食に取り組むかどうかを選択してください。出来れば独学ではなく指導経験が豊富な専門家の元で断食に取り組みましょう。